市場変更(市場区分変更)

市場変更とは

証券取引所に上場する銘柄が所属する市場区分を移動することを「市場変更」、「市場区分変更」といいます。
市場区分によって求められる上場基準が異なっており、時価総額、流通株式比率、株主数といった定量的な基準のほか、コーポレートガバナンス・コードの適用範囲にも違いがあります。
本稿では、代表例として東証の市場区分変更について解説します。

市場変更には、主に次の2つのケースがあります。
 • 上位市場への変更(ステップアップ)
  グロース市場からスタンダード市場・プライム市場へ、スタンダード市場からプライム市場へ移るケース。
 • 上場維持基準を踏まえた変更
  プライム市場・グロース市場の上場維持基準を満たせない会社が、スタンダード市場へ移るケース。
なお、どちらのケースでも、移行先市場の新規上場基準と同じ基準で審査が行われます。

市場変更は新規上場と同様の手続・審査

市場変更は新規上場と同様の手続きで行われ、原則として「主幹事証券会社の審査(上場適格性調査)」と「東証の審査」の2段階の審査を受けます。ただし、スタンダード市場への変更は、主幹事証券会社の審査(上場適格性調査)を経ずに申請することも認められています。

プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場審査基準(概要、2022年4月1日以降)プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場審査基準(概要、2022年4月4日現在)

プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場審査基準(概要、2022年4月4日現在) プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場審査基準(概要、2022年4月4日現在) プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場審査基準(概要、2022年4月4日現在)

 

新規上場との違い

項目

新規上場(IPO)

市場変更
審査基準 申請市場の上場審査基準 移行先市場の新規上場と同様の基準
主幹事証券会社の上場適格性調査報告書
(=主幹事証券審査)
必要 原則として必要
(スタンダード市場への変更はなくても申請可能。その場合、申請予定日の6か月前を目途に東証上場推進部へ連絡)
申請書類 Ⅰの部・Ⅱの部など 市場区分変更申請のためのⅠの部・Ⅱの部など
(効率的な審査ではⅡの部・添付書類を一部省略可)
東証審査期間 標準3か月 標準3か月(条件を満たせば2か月)
上場適格性調査報告書なし:3か月以上(条件を満たせば2か月以上)

市場変更の流れ

ここでは、市場変更のスケジュールと主な提出書類についてご紹介します。

市場変更のスケジュール

市場変更を希望する会社は、申請をする事業年度より前から準備する必要があります。市場変更の申請には主幹事証券会社の推薦が必要となり、IPOと同様、取引所の審査の前に主幹事証券会社の審査を受けます。審査のスケジュールは証券会社によって異なりますが、半年ほどかけて行うことが多いようです。証券審査を終え、申請直前事業年度にかかる定時株主総会が終了したのち、申請書類を取引所に提出します。なお、予備申請※を行うこともできます。

※予備申請制度とは、申請直前事業年度末の3カ月前から行うことができる制度。審査は予備申請に伴う資料のドラフトをもとに進められ、申請会社は定時株主総会終了後に正式申請を行います。

申請以降のスケジュールは下図のとおりです。申請時は必要な書類を一式提出するとともに、取引所で概要を説明します。その後、1~2週間後に取引所から申請会社へ第1回目の質問状が届き、申請会社はその質問におよそ1週間で(書面で)回答します。回答から数日後、回答書をもとに取引所から申請会社に対して第1回目のヒアリングが面談で行われます。第2回、第3回、経営者等へのヒアリングも同様に、書面での質問のやりとり→面談という流れが続きます。第1~3回の質問は合計200~300問ほどです。

市場変更申請後のスケジュール(通常版)

市場変更申請後のスケジュール(通常版)
市場変更申請後のスケジュール(通常版)

※申請会社の事業内容や規模などにより審査期間は異なります
※審査の中で特段の問題がないケースを想定したスケジュールです

ただし、スタンダード市場またはプライム市場へ市場区分を申請する上場企業のうち、「新規上場からの経過年数が3年以内」かつ「上場以降の組織体制や事業内容等に大きな変化がない」企業については通常3カ月要する審査期間が2カ月に短縮できる例外が認められています。その場合のスケジュールは下記のとおりです。

市場変更申請後のスケジュール(短縮版)

市場変更申請後のスケジュール(短縮版)
市場変更申請後のスケジュール(短縮版)

市場変更申請に必要な書類

変更申請時に提出が求められる主な書類は、東証のホームページで公開されていますので、上場を検討している市場ごとの『新規上場ガイドブック』を参照して下さい。
提出書類は、申請会社の状況によって異なり、市場変更と同時に公募・売出を行う場合などは「公募又は売出予定書」なども提出する必要があります。

市場区分変更で注意したいポイント

以下のポイントを押さえ、計画的に市場区分変更を進めましょう!

  市場区分変更のポイント
1 早めのスケジュール策定
申請事業年度の前(N-1期)からの準備が必要で、準備開始から最短でも約2年かかります。
2 東証への早めの連絡
スタンダード市場への変更において、主幹事証券会社の上場適格性調査報告書を提出しない場合は、申請予定日の6か月前を目途に東証の相談窓口へ連絡が必要です。
3 東証の審査期間の目安
標準審査期間は3か月で、条件を満たせば2か月に短縮できます。申請から1年を超えて変更日を設定する場合は再申請が必要です。
4 提出書類の簡略化
最近5年間に実効性確保措置などの措置を受けていない会社は、「企業の継続性及び収益性」を中心に審査され、Ⅱの部と添付書類の一部を省略できます。
ただし、グロース市場への新規上場から3年を経過していない会社は対象外です。
5 CGコードの適用範囲が広がる
グロース市場からの変更では、基本原則のみならず全原則についてコンプライorエクスプレインすることが求められます。

上場維持基準と市場区分変更

東証が2022年4月の市場再編時から設けていた上場維持基準の経過措置は、2025年3月1日以後に到来する基準日から順次終了しました。経過措置の適用会社では、上場維持基準を満たせない場合の方策として、プライム市場・グロース市場の会社は「スタンダード市場への区分変更」、スタンダード市場の会社は「他の取引所との重複上場」を検討する傾向が見られました。

経過措置終了後も、上場維持基準に抵触して改善期間に入った会社は、改善期間の末日までにスタンダード市場への区分変更を申請することができます。手続きは上記の市場変更と同じですが、期限が改善期間で決まる点が大きく異なります。

なお、グロース市場の上場維持基準は、原則 2030 年以降、上場後5年経過後から時価総額 100 億円以上を適用することが決定しています。今後は「グロース市場からの早期のステップアップ」を検討する企業が増えると考えられます。

 

響きパートナーズでは、上場申請書類作成やコーポレートガバナンス・コードの対応のご支援において豊富な実績がございます。
また、東証の事前相談へのアテンド等も可能です。

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響きパートナーズ株式会社

響きパートナーズは、スタートアップの創業期から成長期にかけての様々なステージにおける経営サポートと実務支援を行なうコンサルティング会社です。
現在、IPO支援をはじめとしたベンチャー企業の経営支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。ベンチャー経営に関する諸課題をお持ちの企業様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かし、課題解決に向けて伴走支援しています。

監修者

井熊 実

野村證券公開引受部、㈱エイチ・アイ・エス上場準備PJ統括、エイチ・エス証券取締役、事業会社取締役、SBI証券執行役員などを歴任し、2021年に響きパートナーズに参画。取締役パートナー。

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