各種説明資料
各種説明資料の概要
正式名称は「新規上場申請者にかかる各種説明資料」です。
各種説明資料とは、東京証券取引所のグロース市場または名古屋証券取引所のネクスト市場へ新規上場申請する際に提出する資料であり、上場審査の際の実質的な審査資料となります。
作成にあたっては、東京証券取引所が公開している『新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について』もしくは名古屋証券取引所が公開している『新規上場申請者に係る各種説明資料の記載要領』に、記載すべき項目や記載様式が要請されていますので、これに準じて作成します。
Ⅰの部との違いとしては、各種説明資料はⅠの部をより詳細に記載したもので、Ⅰの部よりも広範かつ詳細に記載します。また、経理の状況が記載されるⅠの部とは違い監査法人はあまり重点的にチェックはせず、主に主幹事証券会社や証券印刷会社のチェックを受けることになります。
参考
東京証券取引所のプライム市場・スタンダード市場や名古屋証券取引所のプレミア市場・メイン市場等については、各種説明資料をより詳細にした「Ⅱの部(にのぶ)」という申請資料が必要になります。
各種説明資料では既存資料で代替することが可能な項目がありますが、Ⅱの部については各項目の記載について既存資料で代替することはできないといった点などの違いがあります。
各種説明資料の記載内容
各種説明資料は下記のような項目から構成されています。さらに、これらの記載に加えて、多くの添付資料(取締役会・監査役会・経営会議等の議事録、計算書類、法人税申告書、月次業績管理資料、予算計画書、社内規程等々・・・)が必要になります。
各種説明資料 目次
各種説明資料作成上の留意点
①経営トップを含めた全社的なプロジェクトとして進めることが必要
Ⅱの部より記載項目は少ないものの、多くの記載や添付資料が必要になる各種説明資料は、作成するために様々なリソースが必要になります。経理担当のみならず、関係各部署が一丸となり作成するものです。また作成には数カ月の時間を要しますが、主幹事証券会社の審査に用いられる書類のため、主幹事証券会社の審査までには作成する必要があります。そこで、自社で内製する場合には、部門横断的なプロジェクトチーム等を立ち上げ、監査法人や主幹事証券会社と連携して入念なスケジュール管理・資料収集をしていくことが重要です。そのために、主に主幹事証券会社と定期的に進捗を管理するための会議を実施することが通常です。
②情報収集体制を整備する
実際の作成にあたってはまず各種説明資料の記載項目を把握したうえで、項目ごとの記載の可否を判断します。記載ができないところについては、上場までに記載ができるような体制を構築していく必要があります。
各種説明資料を作成していく中で、上場会社としての社内体制作りをしていくといったイメージです。
適時開示体制などは非上場会社の場合は整備されていないことが多いので、すぐには記載が難しいかもしれませんが、短信等のトライアルでの作成もふまえて体制を整備して記載ができるようにしていきましょう。
また、役員の職歴については、主要なものだけでなく全て記載する必要があったり、最近3年間のうちに退任した役員についても職歴が必要であったりと、細かな情報が必要となる箇所が各種説明資料では多いので、情報収集体制は重要なポイントとなります。情報を適切に取れるように、業務フローの変更やシステム改修が発生するケースがあることも視野に入れておく必要があります。
③各資料間の整合性をとることが必要
各種説明資料の「事業の内容について」とⅠの部の「企業の概況」における「沿革」など、各申請資料間で共通している箇所もあります。上場審査においては各申請資料の記載に矛盾が生じていないか確認されますので、作成の際には十分注意しましょう。共通する内容を確認したうえで同時に作成すると、整合性のチェックも併せてできるので効率的です。また、整合性のチェックについては複数人で実施することが効果的です。
④自身の言葉でわかりやすく丁寧な記載を心掛ける
Ⅰの部は上場承認後公表されますが、各種説明資料は外部に公表されることはありません。そのため、他社事例を入手することは困難となっています。また、前述の通り、取引所の記載要領に項目ごとの記載内容の要請はありますが、細かい書式の指定などはありません。そのため各種説明資料については記載の仕方に悩む点も多いですが、あくまで主幹事証券会社や証券取引所に会社グループ全体のことを正確に理解してもらうためのものですので、自身の言葉で会社の実態について理解しやすいように、わかりやすく丁寧な記載を心掛けることが重要です。
⑤外部専門家の活用
各種説明資料を作成する場合には、上記の通り業務量が多く、また他社事例を参照できないので、上場を支援する会計事務所やコンサルティング会社に委託することも考えられます。ただし、委託をする場合でも、①で述べた通り関係各部署の協力が必要になるため、部門横断的にプロジェクトをまとめる社内担当者を選定する必要があります。主幹事証券会社や証券印刷会社と連携して社内外を調整し、入念なスケジュール管理・資料収集を推進していくためです。
各種説明資料は外部公表されないものの、上場審査においては自社の状況を詳細に説明する必要があるので、どのような記載が望ましいか外部専門家のアドバイスを取り入れながら効率的に作成しましょう。
各種説明資料のPointまとめ
- グロース市場または名古屋証券取引所のネクスト市場へ上場する際に必要となるメインの審査資料!
- 主幹事証券会社や証券印刷会社のチェックが中心!
- Ⅱの部ほどボリュームはないものの、作成にそれなりの時間・労力が必要!
- 他の書類と共通する内容を同時に作成すると効率的!
- 公表はされないが、会社のことを詳細に丁寧に記載することが大事!
- 外部専門家をうまく活用しよう!
響きパートナーズ株式会社
響きパートナーズは、IPO支援を行なうコンサルティング会社です。ベンチャー企業の経営支援・IPO支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。当社では、IPOに関する課題をお持ちのお客様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かして、課題解決に向けて伴走支援いたします。
高橋 瑞穂
MBA、キャリアコンサルタント。複数の事業会社の管理部門で人事や経営企画に従事し、上場準備室担当として東証1部への市場変更を達成。2017年に響きパートナーズに参画、パートナーを務める。