ライフサイエンス

IPOに向けたショートレビュー

IPOプロジェクトのマネジメント

社内規程の策定、運用、見直し

J-SOX体制の構築、運用

株式会社ペルセウスプロテオミクス

業種
医薬品(がんの抗体医薬品や研究用試薬の開発・製造)
都道府県
東京都
上場市場
2021年6月
マザーズへ新規上場
従業員数
19名(2021年3月末時点)

支援項目

経営管理体制構築の包括的支援および上場申請に関する資料作成、審査対応を支援いたしました。

Q1.御社のビジネスを教えて下さい

当社は、東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)の先端科学技術と多彩な研究ネットワークを基盤に、創薬バイオベンチャーとして2001年2月に設立された会社です。創業以来、独自の技術プラットフォームを用いた抗体医薬品の創出を主軸に、全48種類の抗核内受容体抗体や血管炎症マーカー検出システムといった試薬・診断薬(キット)の開発、および製薬企業の抗体研究支援に取り組んできました。

当社のビジネス上の大きな強みは、抗体スクリーニング技術(ICOS法)や抗体改変・抗体修飾、ヒトファージ抗体ライブラリといった最先端技術を保有している点です。また、多様性の高いヒトファージ抗体ライブラリから、抗体スクリーニング技術を駆使して有効な抗体を効率的に取得できることも、他社にはない優位性として挙げられます。当社はこれらの技術を駆使し、革新的な新規抗体医薬品創出に向けた研究を鋭意推進しています。

また当社は、がんなどを対象疾患とした4本のパイプラインを開発しています。このうちの3本は製薬企業に導出し、各社で治験が進められていますが、残る1本は、安全性や有効性を明らかにしてより価値を高めるために、自社内で研究開発を続けています。

Q2.IPOを目指すに至った経緯を教えて下さい。

当社は2021年6月22日に、東京証券取引所マザーズ市場にて上場を果たしました。IPOを検討しはじめたのは2017年頃です。翌2018年9月には響きパートナーズ様と最初の業務委託契約を結び、本格的なIPO準備に入りました。

IPOに踏み切った理由は、それまで親会社であった製薬企業のグループ会社として創薬の研究開発に取り組んできたものの、グループから外れて独自に展開していくことになったからです。高度な最先端技術を用いた新薬の開発や治験を継続していくには、時間もさることながら莫大な資金を要します。当社はパイプラインの特許を、かつての親会社を含む製薬企業にライセンスしていますが、新薬候補が承認されるまでの道のりは長く、成功確率も高いとはいえません。新薬が上市(市販)されなければ継続的なロイヤリティ収入は得られず、研究開発資金が不足すれば開発は滞ってしまいます。

このような背景から、一企業のグループ会社であるよりも、独立して新薬候補となる抗体を幅広い製薬企業に提供できる立場であるほうがメリットは大きいであろうという結論に至り、IPOを目指すことになりました。

また、上場することで企業体質の強化を図れる点に魅力を感じたことも、IPOを目指した理由のひとつです。強固な経営基盤を構築できれば、より多くの新薬をより早く臨床の場に届けることができるでしょう。こうした理由から、株式公開の最大の目的である「資金調達の多様化および調達力の強化」に加え、「知名度の向上」や「信用力の向上」「優秀な人材の確保」「社内管理体制の充実」「自己資本の充実による財務体質の強化」「適正な株価形成および流通性の確保」等の実現可能性に強い期待を込めて、上場準備に取り掛かりました。

Q3.響きパートナーズを知ったきっかけを教えて下さい。

証券会社でバイオ企業のIPOに携わった経験のある社外取締役から、当社にマッチするのは響きパートナーズ様以外に考えられないと紹介を受けたのがきっかけです。ライフサイエンス企業の上場コンサルティングの実績が豊富であり、業界トップランナーである響きパートナーズ様は、必要要件を充たす委託先として最適であると強く勧められました。

Q4.どのような課題、お困りごとがありましたか?

IPOの準備は管理部が担うことになりましたが、準備を開始するにあたり、部門内にIPO経験者が不在で知見がないこと、かつ準備に係る人員(マンパワー)が不足していることが大きな課題として浮かび上がってきました。

当時の管理部は、部長1名、課長1名、担当者3名の計6名体制で、うち担当者1名の退職が予定されていました。この体制では通常の業務はこなせても、上場に向けた準備を行うのに十分とはいえません。そのため、的確なアドバイスとサポートを求めて、響きパートナーズ様に業務委託することになったのです。

Q5.響きパートナーズを選んで頂いた理由を教えて下さい。

前述の社外取締役は、当社IPOの指南役でもあります。指南役がその実力を保証するコンサルティング会社であれば間違いないであろうということで、安心して響きパートナーズ様にお願いしました。また、当社の社外取締役と響きパートナーズ副社長の小倉様は、バイオ関連の上場に関する業務で何度も協業したことがあり、ビジネスパートナーとしてすでに信頼関係を構築できていた点も選定理由として挙げられます。

Q6.響きパートナーズの支援業務について、特に満足いただけたことを教えて下さい。

響きパートナーズ様には、規程の整備、決算体制の構築、J-SOX(内部統制報告制度)の構築や、申請書類(Ⅰの部、各種説明資料)の作成、主幹事証券会社や東京証券取引所による審査対応に関する助言など、深い専門知識を要する分野でご尽力いただきました。

想定以上に大変だったのは、主幹事証券会社や東京証券取引所から提示される、数百にもおよぶ質問事項への回答書や説明資料を、短期間で作成しなければならなかったことです。響きパートナーズ様には、時間的制約があるなかで、ノウハウの提供や作成書類の添削などでご支援いただき非常に助かりました。1週間ほどの短納期での依頼を繰り返さざるを得ないことも多くありましたが、平日や週末、年末年始に関わらず、迅速かつ臨機応変に対応いただけたので、円滑に進めることができたと満足しています。

また当社は、2020年3月に上場承認を得られたものの市況の悪化によって見送ることになったため、上場申請を2度行っています。2度目の申請準備を行うにあたって、再び響きパートナーズ様に依頼しましたが、2度目も審査対応などで手厚いサポートを受けられたのは心強かったです。おかげさまで無事に株式公開を果たすことができたと感謝しております。ありがとうございました。

2021年6月の上場からまだ数か月ほどですが、知名度や社会的信用度が向上しているように感じています。新規ビジネスを開始する際にも、上場前と比べて話がスムーズに進むことが増えました。そしてなにより、前回上場予定時よりも高いバリュエーションでの上場が叶い、より多くの資金調達を実現できたのは嬉しい誤算です。優秀な人材の確保にもつながっており、研究開発の追い風になることを期待しています。

先の話ではありますが、プライム市場への上場を目指すことになりましたら、ぜひまた響きパートナーズ様にお願いしたいです。

Q7.御社の今後の展望や野望をお聞かせ下さい。

当社は「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」を社是に掲げています。創薬を主軸とする企業として、患者さんの病気を治せるような薬をどんどん世の中に送り出していくことが使命であると考えています。

ミッションを達成するために、高難易度の抗体医薬品の創生に向けた研究を重ねていますが、そのなかでも最重要課題に位置づけているのが、抗トランスフェリン抗体「PPMX-T003」の開発です。「PPMX-T003」は、細胞内への鉄の取り込みを阻害し、真性多血症や急性骨髄などの血液がんに幅広く対応できる治療薬候補のひとつです。

Q1の質問時にも軽く触れましたが、当社は、「ハイブリドーマ法」という動物を利用して抗体を得る技術で開発した3本のパイプラインを製薬企業に導出しています。「PPMX-T003」は、それらよりもさらに高度な技術を駆使し、一歩先を行くパイプラインとして開発しています。

動物を利用せずに抗体を得る「ファージディスプレイ法」および当社独自の抗体スクリーニング技術を用いて創出した「PPMX-T003」は、抗体医薬品候補です。将来的には製薬企業に導出し、新薬として世に出せるように、2021年5月31日に、真性多血症患者さんでの第Ⅰ相試験を実施するため独立行政法人医薬品医療機器総合機構に治験計画届を提出し、2021年現在、治験を実施しております。

また、パブリックカンパニーとしての社会的責任を果たすべく、上場で得られた資金をもとに、より多くの新薬を創出していきたいと考えています。抗体スクリーニングをはじめとした基盤技術を最大限に活用し、早期に結果を出すことで、社会に貢献することを目指します。

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